納棺師をされている笹原留似子さんの著書。
ネットニュースのコラムで見かけ
読んでみたい!と他の図書館から
取り寄せしてもらった1冊。
2011年3月11日に起った東日本大震災で
復元ボランティアとして尽力された笹原さん。
1つ1つのエピソードが心に響きました。
『死はいずれやってくる
誰にも避けることのできないもの
だから死というものを明確に理解し
少しでも近く感じることが、実は大切。
死との向き合い方を知っておくことは、
生を知ることでもある』
この笹原さんの言葉にすごく納得できました。
私が身近な人の死に直面したのは人生でまだ数回。
それも曽祖父の時は3~4歳の頃
曾祖母たちの時は小学生
死がどういうものなのかを
はっきり理解していなかったし
正直記憶もうっすらと断片的。
数年前に長く闘病中だった義伯父の死が
初めてリアルに感じた死だった気がします。
人は本当に亡くなってしまうんだ、と
終始考えさせられる時間だったように思います。
生前お会いしたのが2~3回
すでに闘病中だったために交わした言葉も少なく
そんな私が触れていいのかと疑問に思い
触れてしまったら死を確定することになるような
そんな今までに感じたことのない恐怖も感じ
結局心の中でお別れの言葉、感謝の言葉を
伝えるしかできませんでした。
だからこそ笹原さんが仰るように
死というものを明確に理解する必要が
自分にはあると強く強く感じました。
納棺の際のエピソードはもちろん
肉体が滅びるということ、死後変化のことなど
初めて知ることがたくさんあり
それぞれの現象には全て理由があることが分かりました。
亡くなる直前まで元気に動いていた人ほど
死後硬直や死斑は強く出るなど
初めて知ることがほとんどで
こうやって正しい体の仕組みを理解してると
きっとご遺族の受け止め方も変わるだろうな。
『肉体はいつかなくなる
納棺の後には火葬が控えている
身体があるうちのお別れは
この間にしかできない
誰もが、いつかは送られる立場になる
みなさんは、どんなふうに送ってもらいたいですが
わたしは、笑顔で、楽しい雰囲気のなかで
送ってもらいたい
ちょっとだけ悲しんでもらったあとに』
『死を受け容れるから、泣くことができる
涙はとても大切です
そして、泣き止むころに始まる会話というものがあります
故人が生前、どんな人だったのか
どんな素敵な生き方をしたか
どれほど家族を愛し、愛されたのか』
笹原さんの言葉はほんとに胸にささります。
様々な現場で故人や遺族に心から寄り添われ
丁寧に向き合われているからこその言葉。
私の大好きな祖父母も皆70代後半~80代後半
大好きな祖父母にはずっとずっと長生きしてほしいけど
いつかはきっと別れの時がやってきてしまう。
その時に後悔せず最後の最後まで
感謝の気持ちを伝え愛を伝え続け
正面から別れを受け入れ向き合えるように
そんな覚悟と心の準備をさせてもらったように感じます。
そのお別れが1日でも先の未来になるよう
願ってやみませんが。
笹原さんが変わり果ててしまった故人を
できるだけ生前に近い元の姿に戻した途端
遺族の方が亡骸に手を触れたり
名前を呼んだり抱きついたり
そこでやっと初めて泣けたりと
もちろん悲しみは深いままだけど
そこに少し明るい光がさすような
温かい空間に変わっていく過程を読んでいて
何て尊いお仕事なんだろうと感動しました。
きちんとお別れができる、故人に触れながら
『大好き』『愛してる』『ありがとう』を
心の底から伝えられることで遺族の方は救われ
きっと亡くなったご本人も幸せなはず。
死はどこまでも悲しく辛いものだけど
それだけで終わらせないのが素晴らしい。
誰にでも愛する家族、友人がいる。
この本は全国民の必須図書にしてほしいぐらい
皆に読んでもらいたい。
いつか直面するであろう別れの時
読んでいる人とそうでない人とでは
きっと受け止め方からして違ってくるんじゃないか、
絶望的な悲しみの中にも
一筋の光を見出せるんじゃないかと
私は信じています。
この本に出会えて笹原さんを知れて
それだけで救われた気がします。
1人でも多くの方に
この尊い1冊が届きますように。
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