つるかめ助産院

本・映画の記録

大好きな小川糸さんの作品

『つるかめ助産院』読了📖

ある日突然夫が姿を消し

途方に暮れた小野寺まりあが

2人の思い出の南の島に行き

つるかめ助産院に出会い

自分が妊娠していることを知らされ

島の人たちとの触れ合いの中で

自分の過去と向き合いながら

妊娠、出産、命を考えるお話。

助産院の院長、鶴田亀子先生の言葉が尊い。

『おなかに命を育む人、妊婦さんのことよ』

『あなたは育む人なんだから、それだけでもう、

立派に仕事をしているじゃない』

本当にその通り。

自分の体の中で新たな命を育み

この世に産み出すって奇跡でしかない。

本の中にも

『ただ、どんなに医療が進んでも、

無事に生まれない命もあるということ。

それだけは事実だ。自分が妊婦になるまでは、

妊娠さえすれば、赤ちゃんが元気に生まれてくるものだと

ばかり思っていた。だけど命を生み出す出産という作業もまた、

命がけなのだ』

私も妊娠すれば元気に産まれてくるのが当たり前、

当たり前と思うことすらしないぐらい

当然だと信じきっていたけど

流産を経て、元気に育ち産まれてくることが

いかに奇跡の連続であるかを痛感した。

無事に育っていざ出産!となっても

誕生のその瞬間まで何が起こるか分からず

母子ともに言葉通り『命がけ』だと

これも自分の出産で痛感した。

だからこそどんな過去があろうと

今ある、生きている命を無駄にせず

寿命がくるまで生ききってほしいと思う。

生きているということの背景には

自分と母親の命がけの作業が必ず事実としてあるから。

『みんな、苦しんで苦しんで、もがきながら生きている。

人生の傷は誰かに代わってもらえるものではないのだから。

ある意味、人は生まれ落ちた瞬間から、

誰もが捨て子なのかもしれない。

どこまでも孤独で、だからこそ、

人と触れ合ったり助けあったりすることに

喜びを見出せるのだ』

この言葉も深い。

自分の人生、いいことも悪いことも

自分でしか生きていけない。

代わってもらうことなんてできない。

だからこそ自分次第でどうにでもなる。

友達を作る、恋愛をする、結婚する、子供を産む

こうして人は孤独から解放され

安心感を得てそこに幸せを見つけるのかもしれない。

出産だって孤独だと思う。

産まれてくる赤ちゃんも自分1人の力で

何とかして外に出ようと闘い

母親も結局は自分で、自分の体で闘うしかない。

そんなことを考えると

尊い経験をさせてくれた娘に、主人に、両親に

感謝の気持ちが募る。

今世の中がこんな状況だから

妊婦さん、生まれたての乳児を育てる

お母さんたちは

不安でたまらないと思う。

どうか皆が無事に出産を迎え

元気に育つことを願って止まない。

そしていつか娘の妹か弟を授かった時

妊娠、出産という奇跡を自分の体で

もう一度経験できることに

感謝して育みたい。

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